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室内気候学へのご招待 2:室内空気の質―質的側面と量的側面 生命進化の過程で、植物、動物、人間、生物圏、大気の間に相互的な適応が行われた。何千年もの間、少数の気体の安定したバランスが、この惑星上で生命が成長するための不可欠な条件となった。しかし、ここ数十年の間に、見慣れない気体を空気中に大量放出することによって、人間は気体の濃度を変化させ、この微妙なバランスを崩しはじめている。 完全な空気交換が行われた場合には、室内空気の組成は、屋外の空気と全く同じとなる。したがって、一般的な大気汚染が室内でも認められる。しかし、この一般的な大気汚染に加えて、現代の建物には、建築材料、家具、家庭用品、家庭用化学薬品、機械、暖房システムに由来する別の汚染物質が認められる。空気中に存在するこれら新成分の平均濃度値は低いと言えるかもしれない。しかし、人間の健康に対する影響力は大きい。特に、何千という化学成分を含む現在の建築材料は、人の代謝に相互作用する、見慣れない「分子のカクテル」をつくり出すことがある。その一部は、単独でも健康に重大な悪影響を引き起こすことがあるが、複数の分子の複合作用、相乗作用については、なにも解っていない。ただ、複合作用が単に相加的ではなく、相乗的であることを示す深刻な兆候が認められている。 この問題のほとんどは、いわゆる揮発性有機化合物(VOC)に起因する。VOCは、様々な建築材料や家庭用化学薬品から放出される。普通の現代住居から採取された空気を、ガスクロマトグラフィーと質量分光分析法(GS/MS)で分析したところ、炭化水素、アルコール、エステル、アルデヒド、塩素、炭化水素、殺虫剤、殺菌剤、その他、何百という微量成分の混乱したパターンが認められる。これらの気体、蒸気の典型的な発生源は、塗料、被覆剤、接着剤、結着剤、防腐剤、含浸剤、溶剤、希釈剤、柔軟剤、添加物、その他である。これらの化学薬品のいくつかには、強い毒性または発癌性がある。その他にアレルゲン性、刺激性など非特異的な方法で人間の免疫系に影響を及ぼすものもある。 様々な種類のダスト(埃・ほこり)も別の問題の原因となっている。まったく埃が無いという建物はない(都会の一般住宅に蓄積するダストは、年間20kg以上にのぼる)。また、普通のハウスダスト(家庭埃)のすべてが健康上の問題となるわけでもない。しかし、ハウスダストの粒子は、室内空気の化学物質を引き付け、表面に付着させる。そのため、ダスト粒子中に高濃度の毒物が検出されることになる。例えば、この毒物は、気管支炎の奥から肺にまで侵入し、比較的高い局所濃度となるゆえに深刻な反応を引き起こすことがある。木材用防腐剤から生じる殺虫剤は特にこの傾向が強く、今日では、ハウスダスト中の毒物を分析する標準法となっている。 この他にも、室内気候に著しく影響するタイプの粒子がある。それは、微生物や、その他の小動物の代謝産物である。屋内の空気中に漂う粒子は、無菌とは程遠い。何百万という細菌、真菌、ウィルス、ダニが、ダスト粒子に付着しているか、小さいエアゾル粒子中に分散されている。これらの生物は、粒子によって運ばれ、人の皮膚に付着し、体内に吸い込まれる。微生物が引き起こす「普通の」病気に加え、これらの刺激に対するアレルギー反応や喘息反応を引き起こす人がますます増えている。これは、トン単位の殺虫剤や、防腐剤を使って、私達の近辺からあらゆる種類の微生物を除去しようとする努力と明らかに矛盾する。私達の建物内にいる微生物の運動性、攻撃性に対する静電気現象の影響は、しばしば過少評価されている。 2-2室内空気中の電気磁気現象と生物に対する影響 このテーマの一部は、室内空気に含まれる気体と粒子に関連する。なぜなら、粒子は、しばしば、正または負の電荷を帯びているからである。この電荷は、イオン化された単一の気体分子に影響することもあるが、単数または複数の電荷単位をもつダスト粒子といった複雑な粒子に影響することもある。運動性と局所的濃度は、個々の粒子の電荷に強く関係する。電荷を帯びた粒子は、同種の電荷や反対の電荷を帯びた、室内のあらゆる表面に、引き付けられたり、反発したりするからである。 このテーマはまた、物質外の要因、すなわち、電気、磁気、電磁気の場の全てに関係する。これは極めて新しい分野であり、その一部分においてはまだまだ議論の余地があるが、様々な生物学的、環境学的要因について、残念ながら詳しく検討する余裕がない。しかし、我々の環境のいたる所に存在する電磁場が、室内気候に著しい影響を及ぼしているとの結論を出す科学研究が、今後ますます増える傾向にある。 したがって、我々は化学物質同様、室内の「電気的スモッグ」であるこれらの要因を可能な限り抑制するように努めなければならない。たとえ、健康に対してどの程度有害なのかが正確には解らなくても、抑制に努めなければならないのである。 |
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